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グランプリ、オーディエンス賞|調布市 せんがわ劇場

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グランプリ、オーディエンス賞

THEATRE MOMENTS 『パニック』

代表 佐川大輔さん(演出家賞)、同代表 中原くれあさん

コピー ~ 9.JPG

――あらためまして、グランプリ、オーディエンス賞、そして演出家賞受賞おめでとうございます。早速いろいろな質問をさせて頂きますが、なぜ安部公房の数ある作品の中から『パニック』を演劇コンクールで上演しようと思ったのですか?

 
佐川  僕はもともと作家ではなくて俳優なんです。だからオリジナルの脚本を書こうという欲求はもともとなくて、劇団では古典などの既成の台本をアレンジして活動をしています。

 

中原  2年前くらいに『公房工房』という作品を上演しました。その芝居は安部公房作品のコラージュで、5つぐらいの短編をつなげたものだったんですけど、そのなかにパニックがあったんです。

 
佐川  作っていて「これ面白いなぁ」と。安部公房にしては不条理な要素が薄くて、起承転結もわかりやすいって思いました。それにこの『パニック』なら、上演時間30分の中で、安部公房らしさに加え、今の時代を反映させることが出来るかなと。特に物語後半部分に出てくる『泥棒会社の社訓』が凄く現代的で、これをピックアップしてやりたい!と最初の話し合いで俳優たちに伝えました。観ててわかりましたかね?

 
――ええ、とても。昔に書かれた作品なのに、すごく現代的で面白かったです!

 
佐川  「現代」というのは、つまり経済至上主義なんですよね。僕らは『パニック』で経済成長の不条理さを描きたくて。観やすさはもちろんですが、きちんとお客様に問題提起が出来ればと思って演出しました。

 

中原  今回もそうですが、THEATRE MOMENTSで芝居を作るときはいつも「なぜこの作品を今、上演するのか」というのを参加する役者全員で話し合うんです。テーマを決めてからじゃないと稽古がスタートしない。毎回そうなんですけど、個人の問題で終わる話ではなくて、社会全体に関わってくる話を選ぶようにしています。今はテレビとか、楽しい娯楽がたくさんあるじゃないですか。それなのにわざわざ時間や交通費をかけて劇場へ来てくれる方に、その時しか観られないものを観て頂きたい。ライブ感にこだわって、映像との差別化はしたいですね。

 

――では、これまでの劇団公演ではどのような作品を選んでこられたんですか?

 

佐川  シェイクスピアのような古典劇をベースに、アレンジを加えた作品を創ってきました。あえて虚構性が強いもののなかで、観る人には「自分と同じだ」とか「今起こっていることだ」みたいなことを感じて欲しいんです。

 
中原  距離感があるところから入って、それがいつの間にかなくなる方が、見やすいのかなと。

 
佐川  そう。気づいたら舞台と観客の距離がなくなっていてドキッとするような、それが演劇の面白いところです。演劇でしか出来ないリアリティにこだわりたいですね。今回は試行錯誤の末に小道具としてトイレットペーパーを使いましたが、やはりそれは経済や消費社会の象徴ですし。普段もそうなのですが、テーマを決めて、アイテムを決めて、それから台本を書き始め、やっと稽古がスタートするって感じです。

 
――「台本ありき」の稽古じゃないんですね。

 
佐川  そうですね。しかもその台本も稽古をしながらどんどん変えていきますし。稽古中も話し合いをするので、たまに、皆から「これだとダメ」と言われて、台本を書き直すなんてこともありますよ。ちなみに僕はダメ出しって言葉が嫌いで、『ディレクション』って言ってるんですけど。

 
中原  ダメ出しって日本だけの言葉らしいですよ。海外の演出家はまず良いところを褒め、さらに良くするためにアドバイスをする、という考え方が多いみたいです。

 
佐川  ダメって言っちゃうこともありますけどね(笑)。稽古場では演出家から俳優にトップダウンするのではなく、皆が意見しやすい場を心がけています。

  

 

コピー ~ 10.JPG――演劇コンクールの作品はゲネプロなどを合わせて全部ご覧になったそうですが、ご感想を頂けますか?

  

佐川  いや、かなりレベルが高いなと思いましたよ。それぞれの劇団の特色というか、ストロングポイントが30分のなかに凝縮されていて、しかも面白くて、「これは選ぶの大変だろうなぁ」って思いました。自分の劇団以外でグランプリや俳優賞を予想したりしましたね。

 

  ――他の劇団の方との交流もあったとか。

  

佐川  授賞式と交流会の後で、何人かの演出家が集まっているって聞いたので、そこの会に参加したんですよ。自分の劇団の打ち上げを抜けてね。それぞれの作品について意見交換して、僕もダメ出しされました。(笑)新鮮で参考になりましたよ。

 

中原  佐川は別のコンクールで今回出場した演出家の何人かに負けてるんですよ。
 

佐川  だから今回は絶対にリベンジするぞ!って思って。これでようやくイーブンです(笑)

  

――THEATRE MOMENTSについてお伺いしたいのですが、いつ頃に発足した劇団なんですか?
 

佐川  もう10年ぐらいになるのかな…?もともと劇団というよりも、僕や中原が役者だったので、役者としてトレーニングがしたくて、稽古や本番がない時間に知り合いの役者さんたちと集まって稽古をするグループを作ったんですよね。それを続けているうちに「発表会をしてみようか」という流れになりました。リーダーは何となく僕と中原になって、そのうちにチケット代をもらい始め、序々に今のかたちになりました。

 
――その、集まったメンバーがそのまま今の劇団員になったのですか?
  

中原  いえ、今の劇団員はワークショップを続けていくうちに集まってきたメンバーですね。あと舞台を観て「参加したい」と言ってくれたり。
 

佐川  実は、僕らはある時期まで日本の演劇が面白いと思ってなかったんです。だから海外の人のワークショップばかり行っていたし、高いチケット代をはたいて来日公演ばかり観ていました。そうしたら完全に日本の演劇界から離れてしまって、小劇場との横の繋がりが全くなくなっていました(笑)。まぁしかし、せっかく海外の人に学んでも、日本で公演が出来ないとしょうがないということに気付いて、ちゃんと活動を始めて、そうしたら横の繋がりも増えてきました。それがTHEATRE MOMENTSのスタートですね。
 

中原  最初に私たちが感銘を受けた演出家が、調布在住のアメリカ人なんですよ。デボラさんという方で、素晴らしく自由なアンサンブルワークをされる方でした。彼女のワークショップにはずいぶん通っていたので、調布は思い出深い土地でもあるんです。他に、舞台『春琴』の演出家で有名なサイモン・マクバーニーさんの舞台『ストリート・オブ・クロコダイル』を観て感動して、彼の師匠である「ルコック」系のワークショップを受けたりしていました。
  

――それでは最後に、劇団の今後の展望があれば教えてもらえますか?
 

佐川  自分たちが作った作品で海外をまわりたいというのはあります。今度マカオの演劇フェスティバルに呼ばれているので、それを足掛かりに出来ればと思っています。あとは東京だけではなくて地方でも公演をしたいですし、演劇好きの人たちだけに向けた活動ばかりではなく、一般の人達や子供たちや演劇を観たことがない人たちに楽しんでもらえる作品を作っていきたいです。
  

中原  震災後、去年の1月に郡山の小劇団がボランティア演劇祭をやるというので、参加しました。当時、郡山の劇場は壊滅状態で、公演をする為、スーパーマーケットのロビーにテントを張りました。郡山の劇団と、高校生演劇と、THEATRE MOMENTSの3団体が出演したんですけど、買い物中の方々が足を止めてくださって、そのまま最後までご覧になって、すごく楽しんでくれたのは忘れられません。そんな、演劇に触れるきっかけになれるような劇団になれたらいいな、と思っています。
 

――3月の受賞公演も楽しみにしています。本日はどうもありがとうございました。

インタビュー日 2013年6月12日

 
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