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【専門審査員による講評】|調布市 せんがわ劇場

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【専門審査員による講評】

(以下すべて表彰式の講評より)

 

菊池准(演出・劇作家)
今の演劇状況は混沌としていると思います。しかし一見混沌としていても、時代が過ぎてから当時を振り返ると、その世情を反映した演劇作品というものは必ずあります。今日本が変わりつつある時なのかのかもしれませんが、演劇ははっきりとしていないものが多く、僕たちは模索をし続けています。今回のコンクールは、今の演劇界を占うというか、新しい日本の社会を映す演劇を見つけたいという思いで、一次審査では可能性を秘めている劇団を選ばせていただきました。昨日今日の一発勝負で優劣をつけるのは難しいのですが、各劇団の今後の活躍に期待を込めて、あえて厳しく観させてもらいました。

 
劇団印象-indian elephant-の『終の棲家』は50年後のせんがわ劇場の姿を描いた作品。80歳を超えた俳優の生活が出てきますが、僕はリアルタイムでたくさんそれを知っているんですよね。80歳を超えた俳優はたくさんいまして、その中では第一線で頑張っている人もいますし、セリフが覚えられなくて悪戦苦闘して、ついには降板してしまう人もいます。作品の設定はとても面白いのですが、見ている人間がリアルな感覚を持っている状況の前では、ちょっと弱すぎる。もう少しその展開から先に至る流れや、50年先の未来がどうなっているのか、そこに登場する女優達がなぜ老人ホームにいなければいけないのか、そもそもなぜ劇場が老人ホームになっているのか、など、そういう部分の突っ込みが浅かったと思います。外国人のヘルパーが出てくるところなどは面白かったですが、もっと考えればかなり面白い作品になるでしょう。出演者の皆さんの老人の演技は、かなり観察し研究していたと思います。ただちょっと表現がオーバーになっていたのは残念でした。実際の80歳は割としゃきっとしています。この作品は、現在の年配者を描くのではなく今のあなたたちが80歳になった姿を、例えば千田是也が80歳のときを演るのではなく、今小劇場でバリバリやっている人が80歳になるとどうなるのか、そういう未来図が見えたらもっと面白かったと思います。

 
演劇プロデュースユニットMoratorium Pantsの『とてもだいじなはなしをします。』はメーテルリンクの「青い鳥」を思わせる、ファンタジックなアイディアにあふれた作品だったと思います。テーマとショーという「見せるもの」と「感じさせるもの」のバランスがうまく取れていないと言いましょうか。やはりショーに走っているのでしょうか。要するにメッセージと視覚的なものがうまくからみあっていなかったと思います。役作りに関しては、その役に対する信義的な居方とか、現実的な居方がちょっと全員似すぎています。これは劇団の質感なのかもしれませんが、やはりキャラクターというのは一人一人違うものがあるので、もっと役者がこだわって一つの役を作ってほしいです。例えば座布団なら座布団感が出てくれば、もっと面白かったと思います。アニメチックと言いますか、二次元チックな作品なんですけど、もしかするとこういった作品が一つの世界観を作っていく可能性もある。アプローチとしてはすごくおもしろいので、チープな領域に留まるのではなくて、もっとこだわって二次元的な演技を、例えば吹き出しでセリフが見えちゃうようなものを期待したいです。もしかしたら将来こういう表現方法が生まれるんじゃないかという期待感がありましたが、今回は残念な感じでした。

 

 

楠原竜也(振付家・ダンサー)
2日間で8本の作品を拝見することはなかなかないので、楽しませてもらいました。私は身体表現を行っているので、ダンス作品は今回ないのですけれども、体や空間についてのところなどを講評させてもらえればと思います。
第0楽章の「怪火」は、ミュージシャンが舞台上にいて、世界観を作っていました。それによって、緊張感があって、観ているものとして引き込まれるものがありました。土橋さんの存在感が良かったですね。私自身が言葉よりも体のほうに重点が置かれているので、演劇に関しての感覚は一般の観客のものに近いのかもしれません。雰囲気では楽しめたのですが、後半の流れが唐突すぎて、振り返ってみると頭がついていきませんでした。脚本が既にあるので仕方ないのですが。後半に演出の丁寧さが欲しかったのと、登場人物の感情がきちんと描かれるとよくなるのかなと思いました。そして、モノローグの切り替え部分がはっきりしていなかったのは演出だったのかもしれませんが、はっきりしていれば観客の方にはわかりやすいのではないでしょうか。一概にわかりやすいのが良いとは思いませんが、丁寧な方がよかったんじゃないかな。ただ、全体としては緊張感があったので、そこの強さが面白いなと思いました。

 

第0楽章の「怪火」は、ミュージシャンが舞台上にいて、世界観を作っていました。それによって、緊張感があって、観ているものとして引き込まれるものがありました。土橋さんの存在感が良かったですね。私自身が言葉よりも体のほうに重点が置かれているので、演劇に関しての感覚は一般の観客のものに近いのかもしれません。雰囲気では楽しめたのですが、後半の流れが唐突すぎて、振り返ってみると頭がついていきませんでした。脚本が既にあるので仕方ないのですが。後半に演出の丁寧さが欲しかったのと、登場人物の感情がきちんと描かれるとよくなるのかなと思いました。そして、モノローグの切り替え部分がはっきりしていなかったのは演出だったのかもしれませんが、はっきりしていれば観客の方にはわかりやすいのではないでしょうか。一概にわかりやすいのが良いとは思いませんが、丁寧な方がよかったんじゃないかな。ただ、全体としては緊張感があったので、そこの強さが面白いなと思いました。

 
劇団appleAppleの『僕らがいた街、僕らのいない街』は、どの劇団よりも「調布」と「仙川」をテーマにしていて、すごく好印象でした。また、抽象的で工夫されていた舞台美術には興味を誘われました。空間の使いかたも抽象的でしたが、例えば人の配置を密集させたりとか分散させたりなど、もっと探ることが出来たのではないかと思いました。そういったものが観てみたいです。身体表現としてストップモーションやスローモーションがありましたが、その瞬間の切り替えのメリハリがさらに増すと、さらに見えてくるものがあったんじゃないかなと。もっとそこの追求をして欲しかったです。その2点ですかね。空間と体の追求と、時間と人物と状況と関係性の変化がはっきり統一されて、街の風景をより浮かび上がらせることが出来たんじゃないかなと思いました。皆さんお若い方なので、意識を向ければ向けるだけ高まっていけるので、そうなった状態をまた拝見したいなと思いました。

 

 

徳永京子(演劇ジャーナリスト)
とても勉強になった2日間でした、ありがとうございました。表現者でもある他の審査員の方々と違って、私は観る専門なので、これからお伝えする講評は1番厳しいかもしれません。でも心をこめて観させていただいて、だからこそ見終わって、本気で怒ったりしたものもありました。
まず残念だったのが、全部の劇団ではないのですが、予備審査の時に見せて頂いた資料映像の作品の方が私にとって魅力的だった、そういう劇団が多かったことです。応募した作品は、1時間なり2時間なり、自分たちのつくりたい時間でつくっていて、今回の作品は応募用で30分だったから、だから過去の作品のほうがおもしろかった。それは言い訳になりません。30分という条件のコンクールに応募したということは、30分で普段出せていること、もしくはそれ以上の力を出せる気持ちがあったんだと思います。なので、そこで力を出し切れなかった方達が何組もいたのは残念でした。
そしてもっと残念だった点は、既視感のある作品が多かったことです。聞いたことのあるセリフ、ありがちな会話のリズム、何度も観て知っている展開……そういったものがすごく多かった。「演劇ってこういうものでしょ」とか「コンクールで印象が良いのはこういう傾向なんじゃないか」とか「男女のラブストーリーってこうなんじゃない?」など、すでにあるイメージをもとに、誰かがつくったイメージを鵜呑みにして創られたんじゃないかと感じる作品が多かったです。自分たちの作品に批判性を持ってください。なぜそのテーマを選んだのか、なぜこのコンクールに応募したのか、なぜ2013年にこの作品をやるのか、批評性というのはそういうことを自分たちに問う作業だと思うんですよね。そういうことを一度でいいからスタッフやキャスト全員でちゃんと話す時間を設けて欲しいと思います。そうすれば独りよがりのところが減って、より多くの人に届く、あるいはより深く届く作品が出来ると思います。
パンフレットに劇団の紹介文がありますが、その文章と作品が乖離しているものが多かった。それも同じ問題から来ていると思いますが、もしかしたら他の劇団の公演や商業演劇の舞台をあまり観ないまま、イメージに頼って作品をつくっているのではないでしょうか。だから自分たちの作品を、客観的に見た実情とは違うボキャブラリーで語ってしまうんじゃないかなと思いました。
新しいことや変わったことに価値あるのではなくて、古典でもスタンダードでもいいんです。自分たちがその作品に対して何が出来て、その作品を通して何がしたいのか。そういうことを常に考えて、外の世界を意識してください。この劇場に来るお客さんのことだけでなく、演劇を観たことがない人たちに対して何を伝えるか、そこまでリーチを伸ばして作品をつくっていってほしいと思いました。厳しいことを言ってすみません。

 
まごころ18番勝負の『有限要素法の正しい使い方How To Use The FEM.』は、とっつきが悪いタイトルと、ダラダラぼそぼそとした俳優のしゃべり方で、オーディエンス票がゼロだったのはそういう所に理由があるのかなと思いますけど、実は非常にスタンダードな会話劇ですよね。犯罪者がチームを組んで、あれこれ無駄話をしながら計画を練るのは、最近の映画では『オーシャンズ・イレブン』とか『レザボア・ドッグス』とかありますし、クライムコメディというジャンルも確立しています。この作品も、犯罪そのものを見せるのではなく、その前後の会話で物語を膨らませようとしているコメディだということはよくわかりました。そのジャンルの最新型として、犯罪者をオタクっぽい人たちという設定にしたと思うんですけど、オタクの人たちのしゃべり方をそのまま舞台にのせるのと、オタクの人たちが話しているのを演劇にして見せるのは違うんですよね。後者をやるなら、お客さんに届くオタクっぽい話し方を考えてもらいたいと思います。このせんがわ劇場はあまり大きい劇場ではないので、これぐらいの広さなら、一番後ろの列にいるお客様にも届かないと。せっかく伏線もいろいろ張られている気の利いた会話劇がまったく無駄になっちゃいますよね。内容はすごく良くて、「ロマン」という言葉が何度も出てきますけど、オタクのチームをロマンとロジックで二分させたりして、オタクは嫌いという人にもちゃんと伝わる戯曲だと思いました。

 
THEATRE MOMENTSの『パニック』はオーディエンス賞の受賞が納得できる、完成度が高い作品だったと思います。さっき言った批評性を持ってほしいという私の要望に対して、私見では8劇団のなかでは1番それがあったと思います。技術的にも内容もこなれていて、言ってしまえば非常に手練れで上手いのですが、上手さが嫌味になっていない。それは、常に自分たちがやろうとしていることに対して内省や問いかけを繰り返しているからだとわかりました。きちんと現代性について考えられているのも素晴らしいと思いました。安部公房さんの作品は、今、下手に手を出すと古く感じてしまうのですが、THEATRE MOMENTSさんは安部公房作品が2013年にも通じることをちゃんと証明してくださいました。カラオケの曲目にAKBを選んだというようなことだけではなく、時代のキーワードが細かく検証されて入っていると思いました。消費とか浪費を表現するのに、トイレットペーパーを使っているのもよかったです、トイレットペーパーは汗で破れやすいのに、その危険をおかしながら非常に上手く使いこなしていて、スキルの高さを感じました。
以上、この2つの劇団に関しては辛口にはなりませんでした(笑)。

 

 

真那胡敬二(俳優)
まず、今回のコンクール1回だけの上演のために、30分の作品を作り上げた8劇団の皆さんに心から敬意を表したいと思います。大変お疲れ様でした。講評というよりも、感想というかたちになりますが、そのように受け止めてもらえればと思います。

 
シンクロナイズ・プロデュースの『アカイマユ』は、ゴムひもを使った表現がとてもきれいだと思いました。黒いバックに白いひもだけで風景の最低限の輪郭やイメージだけ伝え、あとはお客さんに想像させるという試みで、とても演劇的で素敵でした。決して新しくはないのですが、皆さん訓練なさっててすごいなと。特によかったのは前半ですね。テレビのフレームや街角の塀のイメージが作品の持っている怖さに繋がっているようでした。ただずっと観ていますと、同じ表現方法が続いているので、作品で伝えようと思っていることよりも、表現方法を見せたいのかな、と思ってしまいました。本来であれば伝えたいものがまずあって、それを有効に伝えるために表現方法があるはずなのに、それが逆転していたのは残念でした。もう一つ、演劇の醍醐味のひとつに舞台上で起こっていることが現実のものだと思わせてしまうマジックがありますよね。演劇は繰り返し上演されるので、すべては約束事の中で出来ているのですが、見たお客さんはそこでほんとに人が死んだり、事件が起きてるんじゃないかと思ってしまうんです。思わせることが出来るっていうのが演じる側の醍醐味で、お客さんもそれを楽しみに観劇するところがあります。ところがこの作品は表現が安定し過ぎていて、そこにはみ出すようなワクワク感、実際に何かおきているようなハラハラするようなものを感じさせては頂けなかった。そこは残念でした。皆さんがどういったものを目指されるのかはわからないですけど、もっと可能性があるということを信じたいと思います。

 
JAPLINの『でんすけ』は、完成されていてOKだと思います。大衆演劇の王道を行っていると思いました。敬意をこめて大衆演劇という意味で、文句なしです。誰にでも分かる世界、親子愛や家族愛を描くのは演劇にとって大切だと思います。どの世界のどの世代の人にも直接伝わるものがあり、素晴らしいと思います。役者のみなさんも的確な演技で、存在感を表現なさっていたし、言うことなしですね。ただ、描かれているのが、われわれが今まで何度も何度も見てきた世界であり、よく知っている世界であるという意味において、新鮮味はありませんでした。でもOKだと思います。

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