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脚本賞|調布市 せんがわ劇場

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脚本賞

待山佳成さん 
(まごころ18番勝負『有限要素法の正しい使い方 How To Use FEM,』)

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―待山さんは劇作家でありながら、演劇以外のジャンルでもマルチに活躍されているそうですね。

 
待山 活躍しているかはともかく、専門学校で音楽の講師をしたり、CMやアーティストに楽曲提供をしたり、ゲームを作ったりしていたので、むしろ劇作家という意識があまりありません。演劇に関わるようになったのもゲーム開発がきっかけなんです。

 
―ゲーム開発と演劇ですか?いったいどんな出会いがあったんですか?

 
待山 今から15年前ほどの話ですが、ゲーム中のCGムービーに声をあててもらう俳優を探していた時に、桐朋短期大学の演劇科に進んだ高校時代の友人から俳優の勉強をしている方を何人か紹介してもらって。その時に知り合ったのが「まごころ18番勝負」の主宰「ゆきを」で、彼女が卒業後に劇団を旗揚げしたいということで音響を手伝ったのが発端です。

 
―なるほど。では最初から脚本を書いたり、演出をされていたわけではないんですね。
待山 はい。初めて演出をしたのは第5回公演で、それまで作演出をしていた方に映画の仕事が入ってしまったため、既成台本を演出することになりました。脚本は第8回公演でミステリ作品を上演するにあたってトリックやプロットを台本形式で書いたのが最初です。その次の第9回公演で初めて全編通して執筆しました。とりあえず1回だけという話だったんですが、それ以降なし崩し的に脚本と演出を担当しています。

 
―続けて行くうちに演劇にハマってしまったのですか?

 
待山 うーん、そこは成り行きですね(笑)。僕は演劇そのものよりも、お客様を楽しませることに興味があるんです。エンターテインメントという病をこじらせているので、ゲームを作っていてもライブをしても、どうやってお客様を楽しませるかということだけを考えたいんです。演劇を作っている方の中には、既存の形からいかにはみ出すか、エッジはどこか、これは演劇なのか、いやこれも演劇だ、みたいなことを好まれる方もいると思いますが、僕の場合は全く逆で、自分が知っている面白いことをいかに演劇という形に落とし込めるかを考えているんです。「どう見ても演劇なのに演劇とは別の面白さで、かつ演劇でしか実現できない」ものが作れたらいいなと。脚本も演出も完全に自己流ですし、演劇の知識も人脈もほとんどありません。演劇関係の本は平田オリザ氏の『演劇入門』を読んだだけですし、これまで観た舞台も20本未満です。これでもかなり増えました。

 
―それは、劇作家としても演出家としても珍しいタイプかもしれませんね。

 
待山 そうかもしれないですね。そもそも演劇を作っているという自覚があまりないんです。劇場があって、俳優がいて、観客がいる、という「フォーマット」でどんなことができるかを考えている感じです。この感覚は、ゲーム開発でいうと「画面が2つあって、タッチパネルがあって、ボタンがこれだけあるゲーム機でどういった遊びが作れるか」というプランニングに近いと思っています。

 
―変わった制作スタイルですが、どういった作品を創っていきたいですか?

 
待山 方向性としては、観客が存在することで初めて成立するような舞台ですね。具体的にいうと、観客が能動的に考えることで面白くなる仕掛けや構造です。

 
―と言いますと、ストーリーや登場人物の心の動きを描くといったものではないんですね。

 
待山 自分には観客を感動させるような台詞やシチュエーションを産み出す適性がないと認識しているので、お客様に誠実でいるためには別のベクトルが必要なんです。観客の意思と思考で、舞台上で語られたものの「その先」を作れるような作品を目指しています。実際にできているかというと難しいんですが、それでも挑戦しているのは、やっぱり、能動的に考えて導いた結論は説明されたものより信じられるし、自分で気付くことは面白いと思っているからです。

 
―成り行きで演劇を続けているとのことでしたが、お話を聞いていますと明確な目標に向けて取り組んでいるように思えます。

 
待山 制約がないと書けないタイプなんです。今の劇団のスタイルもそうですが、まずは皆でジャンルや出演者の人数、男女比、上演時間といった外枠を決めて、そこで初めて執筆にかかります。ストーリーはもちろん考えますけど、僕が主体的にやりたいジャンルというのは特にないんです。

 

 

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―演劇コンクールで上演された『有限要素法の正しい使い方How To Use The FEM.』についてのお話を伺いたいのですが。

 
待山 以前上演した110分の連作短編作品から1エピソードを抜粋して上演しました。元の作品は5分から30分くらいの話が全部で10シーンほどあって、一つの出来事を時系列や登場人物をバラバラにして構成したものでした。美術館で行われるコンクールを巡る物語で、警備員グループの他に芸術家側の話や、主催者サイドの話もありまして、先ほどの話でいうと、観客自身がパズルのピースを組み立てていく手応えのようなものを提供できないかと思いつつ作りました。聞き慣れないタイトルはその構造を示しています。出演者は倍くらいいて、舞台セットも本物の芝生を敷き詰めたりと写実的に作っていました。グランプリを獲れたら副賞のせんがわ劇場凱旋公演で完全版を上演したかったんですが、まあ、パズルのピースを見せてグランプリをどうこうというのもおこがましい話です。

 
―コンクールでのエピソードがあれば教えてもらえますか?

 
待山 説明会や授賞式の後に他劇団の方たちと飲みに行けて楽しかったです。普段あまり他の劇団と関わることがないので、コンクールや演劇祭はそういった方々とコミュニケーションが取れる機会なんです。熱く演劇論を戦わせるわけではないんですけどね。本番はバタバタしていて、他の劇団の作品が観られなかったのが残念でした。

 
―今後、劇作家としてどんなことをしていきたいですか? 野望などがあれば是非教えてください。

 
待山 野望ですか……劇団員を演劇で生活できるようにしたいので、そのために必要なこととして、「観劇人口の拡大」というスローガンを掲げています。演劇ファンに知ってもらうには有名な戯曲賞を取ったりすればいいんでしょうけど、昨年、岸田國士戯曲賞の選考対象にしていただいた際には一次も通らなかったので(笑)。それに、現状の演劇業界は俳優業で食べていける枠が少な過ぎます。となると、母数を増やすしかないだろうと。何十年掛かるのか、そもそも可能なのかも解りませんが、難しい目標を設定したからには勝利条件が厳しくなるのは当然なので。そういった目標のためにも、多様性の一端を担えるような、他では観られないものを作っていかなきゃいけないなと思っています。

 
―ありがとうございました。最後に一言もらえますか?

 
待山 そうですね、少し変わった演劇に触れてみたい方は 「まごころ18番勝負」を観てみると楽しいかもしれませんが保証はできません(笑)。できませんが、頼まれると断れない性分なので、結果的に何でもやってしまいますが、いろいろな挑戦ができて楽しい毎日です。

 
インタビュー日 2013年6月27日
インタビュアー/せんがわ劇場

 

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