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グランプリ 劇団820製作所『踏みはずし(Retake)』
代表:波田野淳紘さん(演出賞、脚本賞受賞)|調布市 せんがわ劇場

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グランプリ 劇団820製作所『踏みはずし(Retake)』
代表:波田野淳紘さん(演出賞、脚本賞受賞)

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グランプリ、そして演出賞と脚本賞受賞おめでとうございます。色々伺っていきたいのですが、波田野さんはどんなきっかけで演劇を始めたんですか?


波田野 初めて劇場で演劇を観たのが高校生のときでした。その頃、横浜にあるテアトルフォンテという劇場で、中高生のための演劇ワークショップが毎年開催されていたんです。友人がそのワークショップの出身者で、彼に誘われてOBOGによる自主公演を観にいって。衝撃を受けましたね。みんな高校生だったんですが、いま思い返してもため息の出るほど面白い芝居で、観ているうちに「どうして僕はあちら側にいないんだ!」と思っちゃって。


―そこでハマってしまったんですね。


波田野 そういうことになりますね。出演者はみんなチャーミングだったんですが、一人とんでもなく自由な役者がいて、心とからだを最大限にいきいきと動かしていたんです。彼女を観ながら、自分の心も解放されていくのがわかりました。思春期の狭い世界のなかで窮屈にかたまっていた自分を、軽やかに打ち砕いてくれた。それで「演劇、ロックだな」と。大学のとき、例の友人に誘われて、二人で劇団を作りました。友人は辞めてしまったのですが、活動を続けるうちに演劇観の共有できる仲間たちと出会い、現在の820製作所になりました。


―波田野さんはずっと作、演出をしてきたんですか?


波田野 はい。劇団の旗揚げ前後、劇作家の川村毅さんによる劇作の講座に参加する機会があって。川村さんの影響はかなり受けていますね。のっけから「演出家は、そこに一行のテクストがあれば、いかようにも劇を展開させることができる」と、一番大切なことを教えてくださいました。その言葉は指針となっています。


―コンクールについてお話を伺いたいのですが、グランプリを獲れると思っていましたか?


波田野 いえ、まったく獲れるとは思っていませんでした。もちろん獲りたいとは思っていましたが……納得いくものは書けていないし、稽古場では役者を不安にさせるし「だめじゃないか俺は」「何をやっているのか」「演劇って何だろか」って揺れて、揺れて。最後には「これがいまの100%だ!」って開き直りましたけど。


―では『踏みはずし(Retake)』を今回のコンクールで上演しようと思われたのは、どんな思惑があってのことでしょうか?


波田野 同じタイトルの『踏みはずし』という芝居を昨年10月に上演しました。2012年の暮頃に劇団の未来が見えない状況になり、一年近く新作を作る機会がなかったのですが、その間にため込んでいたエネルギーを全部その芝居に注ぎ込んだんです。20分の短編芝居だったんですけど、母親、娘、父親の家族の話で、それぞれが5分前後のモノローグを語り、会話もするけど全然かみ合わなくて終わる……という、「関係の崩壊」を描いた、まるで光のない芝居になりました。苛々してたんですね、その頃。手ごたえのある作品でしたが、苛立ちをぶつけるだけじゃ子どもの態度だなと反省し、どこかで再演をしたかった。娘の役に焦点をあてて、光のある方向に膨らませてみようと思っていたとき、偶然にもせんがわ劇場のコンクールが40分以内というルールだということもあり、応募させていただきました。


―作品ありきの応募だったんですね。演出では紙飛行機が印象的でした。いくつぐらい飛ばしたんですか?


波田野 200300ぐらいでしょうか。稽古中に「青春を象徴するアイテムって何だろう?」って問いかけたときに、箒や体操着といったアイディアが出てきたんですけど、出演者の真宮立佳さんが「紙飛行機はどう?」って言ってくれて、「それだ!」って、パクッと飛びつきました。今回の作品では舞台上に風が常に吹き続けて欲しかったんです。僕のなかでの教室の印象って、開かれた窓から常に風が吹いていたなって。10代の、これから始まろうとしている若い心に吹き続けていた風を、劇場でお客さんに感じて欲しい、稽古のはじめにそう伝えた僕の言葉を真宮さんは覚えていて「風、青春、とくれば紙飛行機じゃない?」って。だから僕の演出じゃないかもしれない。()


―紙飛行機そのものにも色々書き込みがありまして、こだわりを感じました。


波田野 テスト用紙を使ったり、落書きしたり。あ、紙飛行機の演出意図はもう一つあって、飛び交う言葉を表現したかったんです。相手に向かって飛ばしていても、届いたり、届かないで落ちたり、全然違う方向へ行ってしまったり……四方から飛び交うなかをひとり立ちすくんだり。暴力的にもなるし、ひどく脆い。そういうイメージを重ねていました。


―それは箒や体操着では出来なかったかもですね。

―ところで話は変わりますが、仙川の街の印象はいかがですか?


波田野 初めて来たのは3月で、去年のグランプリ受賞公演を観に来たときなんですけど、すごくいい街だなとびっくりしました。人の背丈に合っているな、って。


―どこかのお店にはいかれましたか?


波田野 古本屋さんに通いました。安くて、良質な本が並んでいて、素晴らしい。あとは駅前の居酒屋さんで、コンクールの打ち上げをしました。


―来年の3月はガッツリ1週間使えますので、仙川を満喫してくださいもうグランプリ受賞公演の構想などはありますか?


波田野 新作だったらこれをやりたいっていうのがあります。『悲しみ』という芝居なのですが、5年前からやろうやろう、と言い続けていて、これでようやく。でも旧作の『izumi』という芝居の再演もしたいし……、悩みどころです。


―最後に、今後の野望をきかせてください。


波田野 100年後の人に上演を考えてもらうような戯曲を書きたい。一作だけでも。あとは、広くいろんな地域で芝居をしたいですね。講評のときに越光さんが「日本のこの場所で演じていても、その表現は世界に発信するものであるべき」と仰っていて、その通りだなと思って。それは「人間の背負ったものを描く」ということだと僕は理解しているのですが、それを描くための手持ちの手法が、まだまだとても貧しい。いま僕は時代の潮流とはおそらく違う保守的なスタイルを採用していますが、生まれる作品はきちんとスリルのあるものにしたい。世界をこんなかたちで祝福できるのか、と自分もお客さんもドキドキするような、縛りがほどかれていくようなものを作りたいです。


―本日はありがとうございました。


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劇団820製作所

820製作所(はにわせいさくしょ)は2004年に旗揚げし、東京圏を活動の拠点として、演劇の公演を重ねてきました。「本当はそこにあるおとぎ話」をキャッチフレーズとして、生活と人、人と世界のあいだに横たわる詩を、わたしたちの背後に作動するものがたりを、作品化することを試みています。

IMG_2920_RAW.jpg【今後の活動予定】

820製作所10周年記念公演その1『悪魔はいる』@長者町Chapter29/2528

820製作所10周年記念公演その212月予定)


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