貴重な楽器に触れ、生の演奏に心ゆさぶられる珠玉の体験~サンデー・マティネ・コンサートvol.116&ファミリー音楽プログラムvol.12レポート~ 

| | コメント(0) | トラックバック(0)

 せんがわ劇場では、演劇事業とともに音楽事業も行っています。
 今回は、平成25年12月8日に行われたサンデー・マティネ・コンサートと平成26年1月19日に行われた、ファミリー音楽プログラムについて、当日会場でもお手伝いをしてくださっていた、市民サポーターの才目謙二さんによるレポートをお届けします。
 
 
貴重な楽器に触れ、生の演奏に心ゆさぶられる珠玉の体験
サンデー・マティネ・コンサートvol.116 世界の楽器シリーズ「アイリッシュ・ハープ」&ファミリー音楽プログラムvol.12おやこ楽器体験ツアー in 桐朋学園大学

 
 
 せんがわ劇場は、演劇と並んで音楽文化の育成発展にも力を入れています。2011年スタートの「次世代を担う子どもたち育成事業」。その一環である「ファミリー音楽プログラム」は毎回大好評の企画で、2014年1月19日、第12弾では「おやこ楽器体験ツアー」が桐朋学園キャンパス内で開催されました。体験ツアー報告と合わせて「サンデー・マティネ・コンサートvol.116世界の楽器シリーズ アイリッシュ・ハープ」のレポートをお届けします。(取材・文/才目謙二)
 
 
サンデー・マティネ・コンサート vol.116
世界の楽器シリーズ「アイリッシュ・ハープ」
 
 
 せんがわ劇場の「サンデー・マティネ・コンサート」内では、「世界の楽器シリーズ」として普段聴く機会の少ない“希少な楽器”の紹介にも力を入れています。2013年12月開催の「サンデー・マティネ・コンサート vol.116」では、“幻の楽器、金属弦アイリッシュ・ハープ”を紹介。この回はいつにも増して大勢のお客さまがお越しになり、年の瀬の日曜マティネに心なごむ癒しの時間を過ごしました。
 
 演奏者は、気鋭の研究者でもある寺本圭佑氏。2種類のアイリッシュ・ハープ――ガット弦を張った大きめのハープと、やや小ぶりの金属弦ハープを携えての登場です。
 
 ガット弦アイリッシュ・ハープから演奏を開始。まず、その音の柔らかさ、混じりけのない静けさに驚かされます。素朴でありながらも気品に富んだ音色。「スカボロー・フェア」やアイルランド民謡「ダニーボーイ」など耳に馴染んだメロディーが、実に爽やかに聴く人の心に沁みわたります。
 
 歴史の教科書でエジプトの壁画にハープが描かれていたのを覚えている方もいるでしょう。「ハープは人類のもっとも古い楽器です。その伝統がケルト民族に受け継がれ、文字をもたないケルトの人々が神話や叙事詩を吟遊しながら諸国を経巡っていたのです」と寺本氏のレクチャーが入ります。アイルランドの国章に描かれているアイリッシュ・ハープが、欧米ではケルティック・ハープと呼ばれ親しまれているのもそうした歴史からとのことです。
 
 いよいよ金属弦アイリッシュ・ハープの演奏です。その名の通り、細い真鍮弦がコンパクトな弓にピンと張られ、見るからに神秘的な気分を高めます。
 
 400年前の楽譜を再現した珍しい曲など、金属弦アイリッシュ・ハープでなくては弾けない曲が紹介されていきます。極めつけは、カロランという18世紀前半に活躍したアイルランドの国民的作曲家の曲の演奏です。アイリッシュ・ハープの完成者といわれる盲目のカロランが遺した曲は、哀愁に満ち、聴く人の言葉を超えた豊かな情感の世界へ誘います。
 
 スタジオジブリ映画の影響もあって、最近日本でも愛好家が増えつつあるアイリッシュ・ハープですが、生の演奏に接する機会はなかなかありません。金属弦を何度も調律しながら実に繊細な演奏を披露してくださった寺本氏。満席のお客さまからは、素晴らしい演奏への拍手と同時に感謝の拍手も沸き起こっていました。


画像:アイリッシュハープ
金属弦アイリッシュ・ハープを演奏する寺本圭佑氏


ファミリー音楽プログラムvol.12おやこ楽器体験ツアー in 桐朋学園大学
 
●桐朋学園仙川キャンパスで体験ツアー開催
せんがわ劇場にほど近い㈻桐朋学園 仙川キャンパス(調布市若葉町1丁目)。創立60周年を迎えた同学園は仙川文化を象徴する教育機関です。とはいえ、近くに住んでいても「中に入ったことはない」という方も多いようです。
 
「おやこ楽器体験ツアー in 桐朋学園大学」はキャンパス内の教室を使って開催されます。「一度桐朋の音楽教室をのぞいてみたかったけど、普段なかなか機会がなくて」と、真っ先に到着したお母さん。絶好のチャンスとあってか、熱心なご家族が次々と駆けつけました。
 
ご指導いただくのは、せんがわ劇場音楽コーディネーターの松井康司(まついやすし)、合田香(ごうだかおり)両先生。まず、桐朋学園短期芸術大学の視聴覚階段教室で全員が両先生とご挨拶を交わし、趣旨説明を受けます。
桐朋学園で教鞭を執られている両先生のお話はとても楽しくて、早くも子どもたちがワクワクしている様子が伝わってきます。
 
 ガイダンスが終わると、3班に分かれてツアー開始。各班がそれぞれ「箏(そう)」「ハープ」「打楽器」の教室を順に巡っていきます。ハープと打楽器の班は、桐朋学園大学音楽学部の校舎へ大移動。途中、楽器練習中の学生さんにも子どもたちは興味津々です。

●箏(そう)体験教室
松井先生が担当する「箏」は一般に「お琴」と言われます。
「この音色を聴くとお正月だなぁという気分になりますね(笑)。日本の伝統的な楽器ですが、十三絃を基本に、低音部を加えた十七絃、そして伴奏もできる二十五絃など、実は今も進化している楽器なんです」と松井先生。
箏は「一面、二面…」と数えること、独特の楽譜も紹介したあと、学生さんの指導のもと、子どもたちは指に「爪」を付け、順に体験していきます。練習曲は「さくらさくら」。各絃は音の高さが決まっているので、指の運びを教えてもらうと「さくらさくら」の出だしが弾けてしまう子どももいました。
ブログ用1.jpg

●ハープ体験教室
「ハープ」の教室では3台のグランドハープがスタンバイ。教室に入るなり、その優美なたたずまいにお母さん方から「わぁ」と歓声があがります。
担当の合田先生は、「優雅に泳ぐ白鳥も水の中で懸命に足を動かしているように、演奏者は結構大変なんです。重いハープを肩で支え、半音階を出すため両足で7本のペダルを操作しながら47本の絃を爪弾きます」と解説。
子どもたちは順にハープを体全体で抱えつつ、絃を爪弾きます。下部が共鳴胴になっているとはいえ、なかなか綺麗な音は響きません。でも、「楽器の女王」と呼ばれる憧れのハープに触れただけでも大満足。お母さん方も順に体験して興奮冷めやらぬ様子。学生さんに「なぜハープ奏者を志したのですか?」と質問するなど、エレガントな「ハーピスト」にも興味をもったようです。
ブログ用3.jpg

●打楽器体験教室
「打楽器」の教室は桐朋学園の歴史あるオーケストラ練習場。学生さんがマリンバの楽しい連弾で一行を歓迎したあと、ずらりと並んだ打楽器を紹介します。
打楽器は4種類に大別されます。ティンパニや大太鼓、ボンゴ、コンガなどの太鼓類。ゴング、シンバル、カウベルなどの金物類。マラカス、トライアングル、ギロなどの小物類、そしてマリンバ、シロフォンなどの鍵盤打楽器。それぞれ音を聴かせます。小太鼓は「ボレロ」(ラヴェル作曲)のイントロを演奏。解説が終わると子どもたちは興味をもった打楽器に触れていきます。打楽器は「マレット」と呼ばれるバチの大きさや材質、叩き方によって響きが変わることも楽しい体験でした。
ブログ用2.jpg

●感動の輪に包まれたミニコンサート
続いて、今回体験した楽器がオーケストラ練習場で一堂に会し、ミニコンサートが開かれます。演奏するのは丁寧に指導してくれた学生の皆さんです。
まず、箏が現代的な曲を演奏したあと、宮城道雄作「さくら変奏曲」を奏でると、ハープが「さくらさくら」で始まる「日本のメロディー」で応えるコラボレーションを披露。懐かしい旋律がしっとり優雅に響きわたります。箏の音色とハープの音色は意外にも近く、それぞれ絃の倍音が幾重にも重なり合い、教室の天井が空に向かって開かれたような素晴しい音の空間が創造されていきます。
打楽器チームは大きな木琴のようなマリンバを4本放射状に並べてダイナミックな四重奏を展開します。マレット(バチ)が躍動的に舞い、広い音域と柔らかく深い音の響きに聴衆はうっとり。音の波が教室を満たして聴く者を陶酔させました。

学生の皆さんのひたむきな演奏姿勢も子どもたちの心を動かします。子どもたちは耳だけでなく、体全体、五感全部を総動員して、真摯な演奏に聴き入ります。生の楽器の響きを介して生まれる幸せな一体感。感動の輪が確かに生まれたのです。

「このオーケストラ練習場は実は特別な場所です。本学の基礎を築いた斎藤秀雄先生はもちろん、世界的な演奏家、指揮者がここで練習し、演奏しています。世界的指揮者・小澤征爾さんもここでオーケストラ・リハーサルを行ったことがあります」(合田先生)。メニューインやアイザック・スターンも訪れ演奏したという伝統ある教室。音楽の精は、この日、きっと微笑んでくれたに違いありません。
「普段なかなか見たり聴いたりする機会の少ない楽器を、子どもたちに桐朋学園内で体験してもらおう」との今回の企画。松井先生は「幼少期の音楽体験は、人生でかけがえのない価値をもちます。それも、生の楽器・生の演奏に直接触れることが大切なのです」とその意義を述べておられます。
映画「ハリー・ポッター」のテーマ曲イントロで使われ有名になった希少な楽器「チェレスタ」の紹介を最後に終了した今回の楽器体験ツアー。あっという間に過ぎた充実の日曜午後のひと時でした。
せんがわ劇場音楽コーディネーター
合田香先生・松井康司先生

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 貴重な楽器に触れ、生の演奏に心ゆさぶられる珠玉の体験~サンデー・マティネ・コンサートvol.116&ファミリー音楽プログラムvol.12レポート~ 

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.sengawa-gekijo.jp/mt/mt-tb.cgi/166

コメントする

このブログ記事について

このページは、staffが2014年2月 6日 18:01に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「『紙屋悦子の青春』初日観劇レポート」です。

次のブログ記事は「平成26年度サンデー・マティネ・コンサートがスタート!」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。